千代田区内は吸えない

左には総合案内のお姉さん、右にはアニメ声の眼鏡、そんなこんなで3日間の僕の今年のドームバイトは終わった。たぶんこれで通算10回目だと思うのだが、いつ来てもやっていることは変わらない。オバチャンたちは「百恵ちゃんどこ?」ばかりだし、外人も「Card,OK?」しか聞いてこない。まあ、その他色んな質問のバリエーションはあったけども、こんなサルでもできる仕事なのにこの金払いのよさ。素晴らしいバイトだ。心残りはまたしてもロクに英語を喋れなかったことである。ただし何となく心とは通じ合うものなのではないだろうか。などと言っていてはたぶん一生話せない。

締めは神保町二郎である。ドームバイトの後の神保町、怖いのは死刑宣告だ。8時を回ると危ないだろうと考えた僕は、タバコをふかすメンバーを急かし早足で店に向かった。店に着いたのは7時半であったが、僕らは行列を見て愕然とした。最後尾が靖国通りの歩道まで来ている。もう少しで折れ曲がりそうか、というところであった。経験上、並び1時間は固いと踏んでいたが、1時間では到底終わらないというのは誰が見ても明白だった。その後僕ら6人の後ろに男が1人並ぶと、助手が列の人数を数えに来た。まさかと思うとそのまさかで、助手は例の恐ろしい看板を持ってきたのである。助手は最後尾の男に看板を持って動くよう説明すると、足早に店へ戻っていった。そう、まさかの7時半死刑宣告である。僕らは間一髪命を繋いだのだ。タバコがあと1本吸われていたら確実に死んでいた。急いでよかった、と心から思ったのである。ファーストロットは狙って取れるが、最終ロットはなかなか狙って取れるものではない。割と貴重な経験をしたのではないだろうか。

並び始めてから店に入れるまで、結局2時間を要した。代償は大きかったが、得るものも大きいのが神保町二郎である。ドンブリの中に所狭しと詰められた麺、柔らかい豚、完飲いけると思わせるほど絶妙なスープ。いいねえ、神保町は心を癒してくれる、リリンの生んだ文化の極みだよ。

二郎よければすべてよし
ということでニンニクくさいまま帰宅したのであった。